加熱する米中貿易戦争尻目に 日本企業は思わぬ“漁夫の利”
加熱する米中貿易戦争尻目に 日本企業は思わぬ“漁夫の利”
日刊ゲンダイ 2018年7月12日
トランプ政権は10日、中国から輸入する2000億ドル(約22兆円)相当の製品6031品目に10%の関税を上乗せする追加制裁を、9月にも発動させると発表した。中国は「必要な反撃をせざるを得ない」(商務省)と対抗措置を取る方針を表明。熱を帯びる関税合戦の警戒感から、11日の東京株式市場は、日経平均株価の下げ幅が一時450円を超え、アジアの主要株式市場も軒並み値を下げた。
このまま米中貿易戦争が激化すれば、世界経済へのダメージは計り知れない。
「秋の米中間選挙が終われば、トランプ大統領は“折れる”との見方もありますが、最悪のケースとしてリーマン・ショック級の危機も起こり得ます。自由貿易が阻害されるだけではありません。すでに中国では株安、債券安、通貨安で金融不安リスクが高まっている。米国も関税による物価高で、金利上昇、ドル高が進めば、新興国の通貨が急落する。世界的な金融危機が起きれば、日本経済も大打撃です」(経済ジャーナリスト・井上学氏)
■高付加価値品の受け皿
ところが、意外なところに商機があった――。日本にとって米中貿易戦争は、マイナス面だけではない。中国は昨年、米国から約1300億ドルの物品を輸入したが、中国が対抗措置で関税を課せば、米製品の価格は跳ね上がる。ここに日本企業の千載一遇のチャンスがあるのだ。
ジャーナリストの小林佳樹氏が言う。
「米国が中国から輸入するのは価格が安いから。一方、中国の米国からの輸入は事情が違います。わざわざ遠方から持ってくるのは、国内で同レベルの品が製造できないためです。つまり、高度な技術が必要な高付加価値品というわけですが、日本企業の技術なら代替可能です。輸入関税による米製品の価格高騰を機に日本製にシフトする動きは十分考えられます。そのことを声高に喧伝しても米国ににらまれるだけなので、日本政府は何も言いませんがね」
米中が首を絞め合うのを尻目に、日本企業は“漁夫の利”を狙うべきだ。
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