交通インフラや部品供給網寸断、企業の影響長引く-西日本豪雨
交通インフラや部品供給網寸断、企業の影響長引く-西日本豪雨
堀江政嗣、松田潔社、佐野七緒
Bloomberg 2018年7月13日 10:02 JST 更新日時 2018年7月13日 16:39 JST
→マツダや三菱自などの生産復旧せず-岡山の部品メーカーが被災
→死者204人・不明28人に、治水計画の見直しが必要との声も
西日本を中心とした豪雨災害による企業活動への影響が長期化している。被害が大きかった中国地方では発生から約1週間がたつ今も多くの工場が稼働を停止したままだ。生産設備への被害に加えて道路インフラの寸断による物流の停滞が原因で、業績や経済への影響を懸念する声も出ている。
地域最大の製造業であるマツダは7日から広島県の本社工場と防府工場(山口県)での操業をとりやめた。12日から本社の宇品第1、第2工場では2交代制の昼勤のみで、防府工場では夜勤も含めて操業を再開。20日までその体制を続け、21日以降については今後決めるとしている。三菱自動車は岡山県倉敷市の水島製作所での操業停止と再開を繰り返している。
豪雨の影響で操業をストップしている企業
王子HD:グループ会社の呉工場の操業を停止。工業用水停止と工場の一部浸水が主な理由で再開のめどは立っておらず、他工場での振り替え生産も検討
淀川製鋼所:表面処理鋼板を製造する呉工場で6日夜から操業停止。工業用水の供給停止が主な要因で、復旧の見通し立たず
パナソニック:業務用テレビカメラなどを製造する岡山工場で7日から操業停止。工場内への浸水が原因で、復旧は早くて17日
セーラー万年筆:筆記具の生産拠点である呉市の天応工場へ泥水などが流れ込み、部分的に冠水・浸水が発生。周辺交通網の乱れなどもあり工場の操業開始は17日になる見込み。豪雨の影響で25日に予定していた限定万年筆の発売延期。
帝人:携帯端末などに使用される樹脂製品を製造する広島県三原市の工場で9日から操業停止の状態。工業用水などインフラの復旧が見込まれる16日の操業再開を目指している
生産活動に支障が出ている要因としては、一部の部品メーカーが被災していることもある。自動車エンジン用部品などを手掛けるヒルタ工業(岡山県笠岡市)は工場近くの裏山が崩れて被災。山陽新聞によると土砂が流れ込み、作業員6人が生き埋めになり2人が死亡した。同社のウェブサイトによると、マツダや三菱自のほかアイシン精機グループなどトヨタ自動車の系列部品メーカーなどと取引がある。電話取材を試みたがコメントは得られなかった。
自動車調査会社、カノラマの宮尾健アナリストは、国内生産比率が約6割のマツダの国内の生産拠点は広島と山口の2カ所のみで取引先の部品メーカーもその周辺に集中していると指摘。そうした地場の部品会社の多くはタイや中国、メキシコなどマツダの海外生産拠点にも多くの部品を輸出しており、今後判明してくるサプライチェーンの被害の状況次第では「深刻な問題」になり得るとの見方を示した。
トヨタ自動車傘下の軽自動車メーカー、ダイハツ工業も豪雨災害後に一部の工場で稼働を停止。その後いったん全工場で通常稼働に戻ったが、13日は部品不足のため再び滋賀県の工場で夜勤を休止するなど不安定な操業が続いている。
通行止め
広域にわたる交通インフラの寸断も復旧の妨げとなっている。中国地方の交通の大動脈である山陽自動車道は河内インターチェンジ(IC)-広島IC間(約40キロ)で通行止め(緊急車両など除く)となった。国土交通省は13日、同区間を14日に一般車両にも開放する見込みで9日ぶりに機能を回復する見込みになったと発表した。山陽道以外では九州の高速道路でも災害で一部不通となっている区間がある。
国交省の広島市と呉市周辺で通行可能な道路を示した「通れるマップ」によると、12日午後6時時点で通行止めの場所が約30カ所あり、国道2号の一部など通行不能の道もまだ多く、渋滞が発生している。
こうした中、宅配最大手のヤマト運輸は被害地域の一部で荷物の発送や荷受けを停止している。配達できていない荷物がたまっている上、新しい荷物が届くことで、被害地域の営業所が混乱するのを回避することが主な理由。浸水被害を受けた営業所や店舗もあるため、通常作業の実施が難しい状態だという。
菅義偉官房長官は13日午前の会見で、西日本豪雨の死者が204人、行方不明者は28人となったことを明らかにした。ブルームバーグ・インテリジェンスの熊谷侑大アナリストは今回の災害を受けて、「どの企業も製造拠点を移動させることは物理的に、また各地域における雇用の面からも難しいと考えられる中で、国が治水計画を見直して水害のリスクに柔軟に対応できるようなハードウエアの見直しが必要かと思う」と話した。
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